東京都市大学環境学部
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16 | TOKYO CITY UNIVERSITY ENVIRONMENTAL STUDIES環境経営システム学科の研究最前線【課題1】複数のエンドポイントを対象にした影響評価手法の開発運命分析(温室効果ガスの排出から温度変化)、影響分析(温度変化によるエンドポイントの被害量の変化)、被害分析(エンドポイントの被害量から被害指標に変換)に分け、これらを開発し、それぞの結果を統合することで被害係数、すなわち単位量の環境負荷に対するエンドポイントの潜在的な被害量を求めます。【課題2】気候変動の緩和策と適応策を対象にしたライフサイクル評価再生可能エネルギー(太陽光発電、風力発電など)、CCS、省エネルギー(LED、自動車、冷暖房、断熱材利用など)、海水淡水化、空調機、防潮堤を取り上げて、これらの導入による環境影響と被害の低減効果の双方を含めた評価をライフサイクルの視点から分析を行った。インベントリ分析では、関係者ヒヤリングに基づく一次データの利用を優先しつつ、ecoinventなどの二次データを活用しました。影響評価では【課題1】の成果とライフサイクルアセスメントの影響評価手法であるLIME3という手法を用いて、被害評価と統合化を行っています。本研究は、当研究室をはじめ全国の大学・研究機関が参画した環境省環境研究総合推進費研究プロジェクトS-14で得られた成果をもとに、は複数のエンドポイント(人間健康、生物多様性、社会資産)を網羅した気候変動の影響評価手法を開発【課題1】し、気候変動の緩和策(CO2排出量を抑制)や適応策(気候変動による被害を低減)を対象に、ライフサイクルの観点から分析【課題2】を行います。 ライフサイクルアセスメントによる気候変動の影響を評価 伊坪研究室⼈間健康を対象とした被害係数の開発DFSSP(DALY/kg)=(ADSSP−DSSP)/ΔCO2DSSP=∑t,r,i(Tt,r×Rt,r,i,SSP×BLt,r,i,SSP×Pt,r,i,SSP×Sr,i)ADSSP=∑t,r,i(ATt,r×Rt,r,i,SSP×BLt,r,i,SSP×Pt,r,i,SSP×Sr,i)SSP:SSP1,SSP2,SSP3t:2000-2100r:21regionsi:熱ストレス、低栄養、デング、マラリア、下痢、沿岸洪⽔被害係数算定結果(DALY/kg)100年間の損失余命変化SSP3→1:40%減RCP4.5→2.6:50%減1.4億年(死者数280万⼈)/年1010101099990死者数120万⼈/年死者数70万⼈/年死者数35万⼈/年低栄養DF:被害係数、AD:CO2排出量増加時の健康被害、D:基準排出量の時の健康被害、T:平均気温、R:温度上昇によるリスク変化、BL:温度上昇が無い場合の健康リスク、P:対象⼈⼝、S:損失余命に変換する係数Ø将来シナリオ(SSP1,2,3)ごとにCO2排出増加に伴う健康被害増分について算定Ø1tのCO2排出量増加による健康損失は1.4×10-3〜2.3×10-3年Ø栄養失調による影響、マラリアの増加による影響が相対的に⼤きいØCO2排出量の低下は最⼤で250万⼈/年の死亡被害を救う(右図280万⼈/年→35万⼈/年)「人間健康」を対象にした被害係数の開発:温室効果ガスの排出にともなう健康影響(損失余命の変化)を算定「空調機」を対象にしたLCA結果(ジャカルタでの利用を想定):冷媒の改善やインバータの利用による効果(緩和策)と空調機の利用による熱ストレスの軽減(適応策)の双方を評価本研究プロジェクトは、当研究室をはじめ全国の大学・研究機関が参画して2015~2019年度に実施された文科省「気候変動適応技術の社会実装プログラム(SI-CAT)」で得られた成果をさらに発展させるため、科学技術振興機構「科学技術イノベーション政策のための科学」研究開発プロジェクトに採択され、2020年度後半より3年半の予定で実施されるものです。気候変動の影響は全国各地で様々な形で現れつつあります。これに対応するため、全国の地方自治体で気候変動適応計画の策定が進みつつありますが、現時点では、気候変動の予測結果を基に計画が策定されるのは稀です。背景には、専門家と政策担当者とのシーズとニーズのギャップや、長期的な気候変動リスクを「自分事」として取り組む仕掛けが十分ではないことが挙げられます。本プロジェクトでは、これらを解消するため、市民が日常生活で気づいた気候変動影響の事象をウェブGIS等で共有し(市民参加モニタリング)、その事象や科学的知見についてステークホルダー、専門家、政策担当者らとオンラインで熟議を行う「シビックテック」(市民自身がICTを活用して地域の課題を解決する取り組み)の確立を目指します。これにより、気候変動を入口とした将来シナリオの創出手法や、サイバー空間と現実空間を融合したウィズコロナ時代の新たな合意形成手法をさらに発展させます。 オンライン合意形成手法の開発と政策形成プロセスへの実装 馬場研究室+総合地球環境学研究所、滋賀県琵琶湖環境科学研究センター、神奈川県気候変動適応センター、富山大学、大阪大学、千葉商科大学、海洋研究開発機構、NPO法人 環境自治体会議 環境政策研究所他との共同研究SI-CATSI-CATプログラムで開発した統合型将来シナリオ構築手法:長良川流域における気候変動適応についての適用事例の手順(左)と完成したシナリオの例(右)。NPO30()()(FY2018)()(FY2017)(FY2016)(FY2019)SI-CATCASE1CASE2人間健康を対象とした被害係数の開発気候変動の緩和策と適応策としての空調機のLCA

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