10 | TOKYO CITY UNIVERSITY ENVIRONMENTAL STUDIES環境創生学科の研究最前線本研究は、本学が採択された文科省ブランディング事業に基づき設置された未来都市機構のユニットの一つであるグリーンインフラ研究ユニットのテーマとして展開しています。グリーンインフラは自然環境や多様な生き物がもたらす資源や仕組みを賢く利用するインフラであり、様々な緑地を核として地域の課題解決を図ります。具体的には、内水氾濫を防いだり火災延焼を遅らせるなどの「防災減災」、ヒートアイランド現象の緩和や土壌汚染の浄化など「環境改善・修復」、サイバー環境下におかれる未来社会を想定した疾病予防対策としての「健康・ストレスマネージメント」など緑地が様々な役割を果たします。緑地の地理的階層性としての臨海部、都心、都市農地、流域、里山的空間、また土地利用的階層性としての都市施設、建築物、街区、地域・地区、都市、地方などを視野に入れています。例えば河川流域を対象に様々なタイプの緑地の雨水流出抑制機能の評価から効果的な減災対策を提案したり、臨海部の土壌汚染に対して植栽とその刈り取りを繰り返すことによって汚染物質を吸収除去するファイトレメディエーション研究から浄化システムを構築したり、またより人の暮らしに近い暮らし場である建築におけるグリーンカーテンがもたらす熱遮蔽効果について究明するなど体系的に実証研究を推進しています。 グリーンインフラマネジメントに関する研究(生態環境分野)飯島健太郎・リジャルH.B・横田樹広 吉田真史・福田達哉(知識工学部・当時)グリーンカーテンによるバルコニー・室内の温熱緩和効果造成地の緑地の土壌への雨の染み込みやすさを調べる簡易浸透試験本研究は、2019年度重点推進研究に採択された研究プロジェクトです。SDGs「包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する(11.都市)」という目標を掲げています。このなかでも「都市型水害に対する備え(SDGs11.7)」と「魅力的な水辺空間利用(SDGs7)」という両方のゴールに対して効果的な取り組みを検証し、シナジー効果を計測できる指標の構築を目的としています。本研究は、GISを用いた空間解析、アンケート調査、水質調査など様々な手法で都心河川流域を分析し、人間環境・緑地環境・水環境という異なる専門領域の融合を図っています。また行政や企業との連携を大切に考え、本研究で得られた成果を社会へ還元するためのシステムを構築しています。具体的には、水へのアクセス性とQOLに関わる河川環境条件を抽出するために、全国の河川づくり施策の比較や、河川沿いに整備された空間の利用実態を評価しています。また子どもや高齢者が河川とどのように接点を持っているかを把握するために、子ども向けフローチャート型アンケートを容易にする「フリップカード」を開発したり、高齢者の避難行動を把握して都市型水害への備えを検討したりしています。さらに、流域の雨水流出を抑制する緑地環境の評価として、小流域環境とハザードマップ予想浸水深との関係や、表流水の流出過程における緑地の分析を進めています。 都心河川流域の防災環境シナジー研究(都市環境分野)丹羽由佳理・横田樹広身近な河川に対する子どもの認識調査(フリップカードの開発)CASE1CASE2臨海部の土壌汚染対策を目指したファイトレメディエーション実験流域の雨水流出抑制に貢献する緑地環境の評価渋谷駅渋谷川累積流量が小さい緑が 台地上に分散 表流水の発生源で浸透させる環境づくりが重要渋谷川流域古川流域累積流量が大きい緑が川への集水経路沿いに分布 集水経路(坂)ごとの流出抑制,崖線環境の保全が重要
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